九十九島・地名考17 トンノス 九十九島には歩いて渡れる陸繋島が多数あります。俵ヶ浦の鞍掛島、亀ノ子島、船越の興津島(湯口埼)、青島(前島)、鹿子前海岸の小島、日野の二ツ小島、七崎島、そしてここで取り上げる「鳥ノ巣島」です。 「鳥ノ巣島」は「アランラ鼻」を介して陸地と繋がる2重の陸繋島という特徴があります。つまり「鳥ノ巣島」へ渡るに は、日野町字「小鳥ヶ浦」にある半島(鰯ヶ浦鼻)の先端に出て、瀬戸を越えて「アランラ鼻」に渡り、「アランラ鼻」を海岸沿いに半周したら「鳥ノ巣島」へ 渡る瀬戸に出ることが出来ます。下図はグーグルアースの画像ですが「小鳥ヶ浦」→「アランラ鼻」→「鳥ノ巣島」の行程が判ります。なお「鳥ノ巣島」の周り にはさらに3つの小さな陸繋島がありますので、これらの小島は3重の陸繋島と言えます。 「アランラ鼻」は伊能忠敬測量日記に出てくる地名です。このあたりには「小穴(こあな)」という小字名や「大穴(おあなんた)」という地名が残っています ので、おそらくは「穴浦(あなうら)」が転訛してアランラとなったのではないかと思われますが、「小鳥ヶ浦」と「鳥ノ巣島」の中間にある「間の浦(あいだ のうら)」が転訛した可能性も捨て切れません。 長崎県小字一覧に拠ると、「鳥ノ巣」は「とんのす」、「小鳥ヶ浦」は「こといがうら」と読みます。この2つの読みを語を区切って対比すると下記のようになると考えられます。
「うら」に対応する「す」と言えばまず「洲」が思い浮かびます。では洲とか浦にある「とん」とか「とい」とかは何を意味するのでしょうか。実際に現地に行ってみると、水路=樋(とい)としか思えないものがありました。 瀬戸の中央に幅1mほどの水路があるのです。この水路は上のグーグルアースの画像にもはっきり写っています。「アランラ」と「鳥ノ巣島」の間の瀬戸がまるで人為的に掘削されたかのようです。同じような水路は「小鳥ヶ浦」と「アランラ」の間にもあります。これらの水路は節理に寄って自然に出来たもののようですが、この水路を樋(とい)と呼んだのでしょう。以上を整理しますと下記のようになります。 樋の洲(といのす)→鳥ノ巣 小樋が浦(こといがうら)→小鳥ヶ浦 鳥ノ巣島には砂浜があり、シーカヤッカーや釣り人に人気がある島のようです。
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