九十九島で見えた蜃気楼 

 蜃気楼は富山湾で見えるものが有名ですが、外気温と海水温に差があれば海面近くで屈折が起こる訳ですから冷え込んだ日には各地の海岸で見ることができる筈です。しかし十キロ前後離れた海上に大きな船か小島、あるいは対岸に建物とかの適当な対象物が無いと反転像が確認できないので、この対象物の条件を満たす海岸は案外少ないのかも知れません。

 外気温が海水温より低い時に見えるのは「下位蜃気楼」と通称される上下反転像が実像の下部に現れて全体が浮かんでいるものであり、さして珍しい現象ではないようです。

 これに対し反転像が実像の上部に現れて、物体が引き伸ばされて見える「上位蜃気楼」と呼ばれる現象がありますが私は見たことがありません。

 下の画像はあまり珍しくはない「下位蜃気楼」を九十九島を望む佐世保市日野町の海岸から撮影したものです。撮影日は三月九日、かなり冷え込んだ日で曇ってはいましたが春霞はほとんど無く蜃気楼を狙うには好条件でした。

 写真は左から順に、近くの岩礁とその背後の西彼大島町大島(距離約十五キロ)、上五島航路のフェリー(距離約六キロ)、平瀬と白瀬と呼ばれる小さな島(距離約十二キロ)が浮かび上がり、反転像が下部に見えています。

 撮影機材はキヤノンEOS−1NにEF300/4LIS & 2.0extender.

 この写真は読売新聞「読者のニュース写真」2003年3月の佳作に入選しました。

 

 

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