九十九島に歩いて渡る 

 西海国立公園九十九島にはその名の通りたくさんの島々があります。その総計は島を数えるプロジェクトにより208島と判明しました。このプロジェクトでは島の定義は、

 『自然に形成された陸地であって、高潮時において、水に囲まれ水面上にあるもの』  

 『植生(潮間帯より上に生える植物)が認められること』

 とされました。見方を変えれば干潮時には陸地とつながっている渡れる島があることになります。私が渡れることを知っていて実際に歩いて渡ったことがあるのは、日野町から行く「七崎」と「鳥ノ巣」、俵ヶ浦町から行く「亀ノ子島」と「鞍掛」です。このうち鞍掛島は満潮時に陸から100m以上離れるので、もっとも島に渡ったなという印象があります。

 下の画像は潮が満ちているときの鞍掛島付近を石岳展望台から撮ったものです。島の左手の岬には七郎鼻という名前がついており、大潮の干潮時にはここと繋がります。

 

 下の画像は、干潮の時に撮りました。島と岬がなんとなく繋がって見えます。

 

 七郎鼻には白浜海水浴場から海岸沿いに歩いて20分程で行けます。行けますが海岸は風化して崩れた岩だらけで歩きにくく疲れます。

 下の画像は中くらいの潮の干潮時に七郎鼻から鞍掛島を見たものです。細い道状に岩場が海面から露出して島と繋がっています。大潮の干潮時にはもっと太い道になります。

 上記の細い道を渡って鞍掛島を一周してみました。下は西側から見た鞍掛島です。島も海岸も節理がくっきり入っていて今にも崩れ去りそうです。九十九島海岸の岩には強く柱状節理が入っているところが多いのですが、ここら辺りの海岸は特にそう感じます。

 さて節理の入った岩についての余談ですが、ここの地名「俵ヶ浦」の語源は節理の入った岩を俵石と呼ぶからだという説が有力です。異論はありません。

 伊能図小図「九州一円之図」を見ると俵ヶ浦半島は「甲崎」と記され、「自甲崎至日野浦總曰九十九嶋」と添え書きがあります。柱状節理の入った玄武岩の断面は六角形になることから「亀甲石」と呼ばれることもありますので、この「甲崎」は亀の甲の「コウサキ」ではないかと思われます。

 さらにこじつけ話を続けますと、俵ヶ浦半島の南端は「向後崎」あるいは「高後崎」と書いて「コウゴサキ」と読みますが、「コウサキ」と関連する地名で実は「甲後崎」ではないかと推測されます。

 また、さらに憶測をたくましくしますと、白浜キャンプ場がある「国崎」はじつは「コウサキ」が「コクサキ」に転訛して当て字がついたものであり、国崎と高後崎の中間にある兜崎(小字名は甲崎)は甲崎のコウをカブトと呼んだものではないかと思います。

 そんなに訓読みと音読みをごちゃごちゃにして良いものかという気もしますが、日光の男体山の別名「二荒山(フタラサン)」は、訓読みから普陀落山に通じて信仰の対象となり、音読みの「ニコウ」は佳字2文字をあてて「日光」に転じています。

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