九十九島 島名考 その1 ヒツツアキ 下の画像は石岳展望台からの夏の定番構図です。 島名のうち「アランラ」というのは伊能大図に記入されているもので現在は名前がありません。「干切」というのは小字名で元島の西側部分です。 このあたりの海岸を何度か歩いてみたことがあります。干潮時には七崎島は陸続きになり突端まで行くことが出来ます。 上の画像は干潮時のもので画面右上で七崎島が陸地と繋がっているのが判ります。潮が大きくなくても陸地と繋がってしまうせいか七崎島はあまり島らしい扱いを受けておらず、正保絵図や元禄絵図(*注)には出てきませんし、伊能大図では「検校崎」とされていて島ではありません。現在の海図では一応島扱いですが、九十九島のガイドブックやパンフレットには名前が出てきません。 そのため読みが判らず、以前からこれは「シチサキ」なのか「ナナサキ」なのかが疑問でしたので、佐世保市立図書館で小字名一覧を見ると、そこには七崎の読みとして 「ヒツツアキ」 と、思いも寄らぬことが書いてありました。 思うにこれは「干つく岬(ヒツクミサキ)」の転訛に違いありません。干潮時に陸地と付いてしまう岬のことだと思います。 ヒントは前述の元島にある小字名「干切(ヒキレ)」です。これは干潮時に水路が切れて陸地化してしまうという意味です。元島は中央部にくびれがあり、数十年前の航空写真を見るとそこには水路があり切れていて二つの島のように見えます。また伊能大図でも幅の無い直線で記載されておりほとんど切れていたものと思われます。 伊能大図には松浦島の近くに「満切(ミチキレ)」という島名も記載されています。これは満潮時には陸地から切れてしまう島という意味で、他の地域でも例がある地名のようですし、伊能忠敬測量日記には頻繁に出てきます。 干つく岬がヒツツアキと転訛し、その後改めて地名に漢字を当てるとき「七崎」の字が選ばれたものと思われます。 余談になりますが、「干つく崎」の文字から思い浮かぶのは佐世保湾東岸の地名「干尽(ひづくし)」です。元禄絵図にも「ひつくしの浦」とある古い地名です。干潟でもあったのかと漠然と思っていましたが、もしかしたら「干つく島」がこの辺にあったのかも知れません。 |